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内科・循環器内科
矢部クリニック
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院長のつぶやき

医者嫌い

医者嫌い

なぜ嫌われるのでしょう、私たちは。いつも考えて来ましたが、今迄に(今も?)作り上げられた悪いイメージがあるからでしょうか。でも、私たち医師と患者さんとの目標は当然同じものなのです。「病苦から開放される事・健康である事」に他なりません(ここでいう健康は病気が全くないことを意味するものではありません)。その為には先ずお互いの意思の疎通を良くする事、その為には患者さんの意見を良く聞く事、そしてなぜ薬、生活制限等の医療行為が必要かを理解して頂く事、が大切かと思い実行しているつもりです。理屈抜きで飲みたくない薬もありましょう、その時は内緒にせず仰って頂きたいです。いろいろな意味で無駄になってしまいますから。あなたの体はあなただけのものではありません、ご家族にとっても当然とても大切ですし、天涯孤独と思っている方も実はあなたの周囲、地域、ひいては日本・世界・今を一緒に生きる人類にとってとても大切なんです。ですから嫌わずにお体の心配事はなんでもご相談ください。

タバコのお話1

愛煙家の皆さん、煙草吸い始めのきっかけは何でしたか?二十歳になって大人になったから?実は二十歳前になんとなく興味があって吸い始めた方もいるでしょう。事実、平成16年の全国調査では以前より減ったとは言うものの中学1年男子で13.3%、女子で10.4%、高校3年男子で42%、女子で27%喫煙経験があるという事に驚きます。そもそも煙草はいつからあったのでしょうか。調べてみると新大陸の原住民達が利用していたのが始まりだったようです。1492年にコロンブスが新大陸を発見し上陸した時に原住民達からもてなしを受け親睦の意味で煙草を贈られそれが広まって行きました。今では有害物質と言われる煙草ですが、当時は自然の中に宿る精霊達へのお供えとして利用し、また特別なご馳走品としてお客様に差し上げていました。その後ヨーロッパの人々は煙草が疲れを癒し痛みを和らげてくれる素晴らしい薬草であると思うようになりました。日本には1543年鉄砲の伝来とともにやはり薬として伝わっています。しかしその後1828年にはニコチンが分離同定されその毒性の強さが確認されます。そして第二次世界大戦後煙草と肺癌の関係が疑われるようになり、1962年にイギリスで1964年にアメリカでそれぞれ喫煙が肺癌死亡増加の要因であると発表されました。今や煙草の毒性は肺癌だけではありません。口腔、咽頭、喉頭、食道、胃、膵臓、膀胱、子宮とそれぞれの癌に関係し、喉頭癌に至っては32倍も発症率が高くなっています。また、動脈を傷つけ心筋梗塞や脳卒中を引き起こしたり、じわりじわりと肺胞を壊し気が付いたら酸素を持ち歩かなければならなくなってしまった人もいます。更に自分は吸ったことがないのに環境喫煙の為に喘息になってしまった人もいます。これだけ身体に悪いと分かっている煙草ですが、何故愛煙家の皆さんは止められないのでしょうか。それはニコチンの持つ依存性(身体的依存・心理的依存)の為なのです。

タバコのお話2

タバコのお話2

前回煙草が癌・脳卒中・心筋梗塞・慢性肺疾患を引き起こす原因の一つであるという事を書きましたが、何故愛煙家の皆さんは煙草を止められないのでしょうか。煙草を吸った時にはニコチンが脳に作用しドパミンが放出、脳内報酬系が刺激され快感や報酬感が得られます。そしてその為もう一度吸いたくなりますが、それを繰り返すうちニコチンが無いと脳神経細胞が正常に働かず快感・報酬感が得られなくなってしまい、身体的依存状態となってしまいます。煙草には約4000種類の化学物質が含まれており、中にはニコチンをより吸収し易くする物質も含まれ、中毒になりやすく作られています。タバコを吸うとスッキリするとか仕事に集中出来るという話を聞きますがこれは実はタバコが無ければ集中出来ない身体になってしまっていると言う訳です。この中毒性はヘロインやコカイン等の麻薬より強いと言われています。この中毒の為に愛煙家は知らず知らずの内に喫煙はストレス解消である等、喫煙行動を正当化させてしまっています。平成23年の調査では日本人の喫煙率は男性では32.4%女性では9.7%であり、昭和41年のピーク(男性83.7%)に比べると徐々に減ってきてはいるもののまだ先進諸国に比べて喫煙率は高い水準です。ご存知ですか?完全に無風の室外でタバコを吸った場合、その煙の影響はテニスコート2面にまで及ぶことを。タバコの煙の中には一酸化炭素を含め少なくとも200種類の有害物質が含まれており、喫煙後その人の吐く息にその有害成分が含まれていることを。一酸化炭素と言えば、濃度が高くなれば我々は生存できないいわば毒ガスです、そんな物質が体の中を巡り吐く息に出てきます。ホタル族をしてもご家族への影響は出てしまいます。ご自分が危険なだけでなく大切な家族まで危険な目に会わせてしまっています。喫煙行動は大人の嗜好ではなく実はニコチン中毒の為であるとご理解頂けましたでしょうか?子供ではより中毒に陥りやすいのですが、日本ではすでに明治33年に健全なる青少年の育成を目的として「未成年者喫煙禁止法」が制定され現在に至っています。ですが、子供は大人の真似をしたがります。未成年の喫煙行動は友人・親・兄姉・教師などの喫煙と密接な関係にあります。健全なる青少年を育成する為にも、将来の日本の為にも、今から…禁煙!

タバコのお話3

ニコチン依存症のお話を今回はもう少し掘り下げたいと思います。ニコチン、アルコールは覚せい剤や大麻などと同様に精神依存を引き起こす作用のある依存性薬物です。これら薬物の脳への作用点はそれぞれ異なりますが、これら依存性薬物が共通して作用する「脳内報酬系」と呼ばれる重要な神経系が有ります。この「報酬系」はネズミ脳内を電気刺激する実験中に、ある部位に電極を埋め込むとネズミが盛んに通電用のレバーを押し続け電気刺激を求めた、と言う事から発見されました。この脳内報酬系で主要な役割を持つ神経伝達物質はドーパミンですが、ドーパミンは人間の脳機能を活発化させ快感を作り出し意欲的な活動を作り出す重要な物質です。依存性薬物はこのドーパミンの放出と再吸収に影響を及ぼし強制的に脳を興奮させます。このドーパミンの放出により多幸感や快感が得られる為繰り返し使用する訳ですが、繰り返すうちに耐性を生じ脳自体が薬物を求め薬物を呼び込む状態に変化してしまい常に薬物がなければ活動できなくなってしまいます。こうなると意思の力ではどうにも制御する事が出来なくなります(故にニコチン依存症は病気であり、医療保険による治療が可能です)。本来脳内報酬系は食欲などの生存に不可欠な事が充足した時や、他者から褒められた時などに活性化します。更に脳科学者の茂木健一郎先生によれば、難題を達成した時にはより強くドーパミンが分泌されその量が多いほど大きな快感・喜びを感じている、従って脳はドーパミンが分泌された時どんな行動をとったか記憶し、ことあるごとにその快感を再現しようとし新しい神経回路網が形成され、それを繰り返すうちにその行動が上達してゆく、特に試行錯誤を経る事で脳内により強固な神経回路網が形成されやがて一つの行動が練達してゆく、これが学習であるとの事です。お酒やタバコや過食ではなく、趣味や奉仕活動を通じまたはスポーツや学習で自分により強い負荷をかける事で沢山ドーパミンを出したいものです。あの水泳北島選手の「チョー気持ちいい!」のように。